月の絆~最初で最後の運命のあなた~
「今の彼女からは、フェロモンの匂いがする。オレまで波に呑まれそうで、美奈が偶然いなかったら……マリアを襲ってたかもしれない」
自制心と忠誠心で、瑞季の右に出る者はいないし、狼呀の信頼を得ている者もいない。女ぐせが悪くても、そこは変わらない。
そんな瑞季の言葉に、狼呀は驚いた。
「マリアは女なんだからフェロモンはあるし、俺が感じられるのは伴侶だから当たり前だが……お前や人狼に影響をおよぼせるのは、同じ種族の女だけだろ?」
「そうだ。つまり、彼女は――」
狼呀には、信じられなかった。
マリアからは、人狼の匂いはせず、清潔で健康的な人間の温かな匂いしかしない。
「彼女の事、しっかり観察したほうがいいぞ」
瑞季の言葉が頭の中で、うるさいくらい響く。
(何か、見落としたのか?)
よろめくように壁に寄りかかり、狼呀は息を止めた。
頭に浮かんだのは、柔らかい腕に巻かれた包帯。
あの下からは、古い血の匂いと胸騒ぎを起こしそうなほどの……秘密の匂いがしていた。