いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「…暁」

ふと夕夏が、縋るように天地の上着の袖を引いた。

天地も解り切った様子で、夕夏の頭を撫でる。

今まで気丈に振る舞って見せていた夕夏だが、漸く甘えを見せられる人が傍に来てくれたことに安堵したのだろう。

「来るのが遅くなってごめんな…賢のところに連れて行ってくれるか」

夕夏は黙ったまま、こくんと頷いた。

「それじゃあ皆さん、来た早々に失礼ではありますが…」

「いえ、早く賢夜くんのところへ行ってあげてください」

京に深々と一礼すると、天地は夕夏と共に病院へと向かった。

その後ろ姿を見つめながら、仄は小さく息をついた。

「…先生ね、賢夜のことで連絡を貰ったとき本当はすぐにでもこっちに行きたがってたんだ。でも炎夏も、色々とごたごたしててね…なかなか来れなくて」

つらそうな先生の姿は見ているだけで可哀想だった、と仄は呟いた。

「あたしはあの子らと数える程しか逢ったことないけどさ…二人ともいい眼をした子だよな。あの子たちは本当に天地先生の大切な子供なんだろうね」

その子供たち同士が争って、その一人がもう一人に致命的な怪我を負わせたという出来事は、天地にとって計り知れない程の苦しみだったろう。

「あのとき俺がもっと冷静に行動してれば、賢夜はあんな目に遭わなかったかも知れない。なのに、俺…」

本当なら、天地に会わせる顔などない。

忙しさと後ろめたさを理由に、賢夜の元へも実はまだ顔を出せていなかった。

自分のせいで賢夜は慶夜とあんな形で対峙することになって、結果的に賢夜は目を醒まさなくなってしまったと思うと、居たたまれない気持ちで一杯になる。
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