いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「あら、お帰りなさいませ若様。それに陸様もご一緒にお戻りでしたか」

邸に戻ると、通り掛かった周の秘書官の女性が京に声を掛けてきた。

「うん、ただいま。父さんは?」

「今のところは一段落つきましたけれど、夜にもう一つお仕事が入ってまして…まだ執務部屋にいらっしゃる筈ですよ」

「そっか…じゃあ今なら少し時間が取れるかな。有難う、お疲れ様」

京が微笑み掛けると秘書官は控えめに一礼をして去っていった。

「僕が父さんを呼んでくるから、陸と風弓くんは仄さんを晴海ちゃんの部屋まで案内してくれるかな?」

「あ…俺も一緒に行く。勿論、晴には早く逢いたいし仄さんとも色々と話がしたいんだけど…先に父さんと話さなきゃいけないことがあって」

晴海に逢うよりも優先させる、ということは――晴海の部屋では余りしたくない話題ということだろうか。

「分かった。じゃあ息子よ、案内よろしく」

「う、うん」

「悪いな、風弓。なるべく手短に終わらせて父さんとそっちに行くから」

――そうして陸と京の二人と一旦別れると、傍らの母が小さく嘆息した。

「すっげぇでかいお邸だね。晴もふゆもこんなとこで世話になってんの」

「まあ…俺はつい最近だけどな。母ちゃん、こっちだよ」

仄は辺りを見回して感心しながら、広い廊下を進む。

「…はる、気後れしてなかった?あの子は人の世話になりっぱなしだと気に病むだろ」

「うん…してたよ。思いっ切り」
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