いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「炎夏で暮らし始めてからね…何でも自分で出来るようになるって意気込むのは良かったんだけど、人の好意に甘えるのが余計下手になっちまって」

「…やっぱり、俺や父ちゃんがいなくなったせいだよな」

「んー。まあ…それも少しはあるかも知れないけど、昔からそういう傾向はあったし何とも言えないかな」

母が気を遣ってくれたのか否かは判らなかったが、そうこうしているうちに晴海の部屋まで着いてしまった。

「――姉ちゃん、愛梨さん。俺…風弓だけど」

扉を叩くと、向こう側からこちらへ走ってくる足音が聞こえる。

「っおかえり、ふゆちゃ…」

開いた扉から元気良く顔を覗かせた晴海は、風弓の後ろに立つ仄の姿を認めて眼を見開いた。

「はる」

名前を呼ばれても暫く反応がなく、漸く出てきた言葉はとても小さかった。

「……かあさん?」

「どした、晴。ちゃんといい子にしてた?」

晴海は泣きそうな表情で頷いて見せると、思い切り仄に抱き着いた。

「かあさんっ……はる、ちゃんといいこにしてたよ?」

「そうか。偉い偉い」

「あのねっ、はる、おともだちができたんだよ。りっくんと、ゆうちゃん」

「そうか、良かったねえ。………今は陸もお友達、か」

不憫だな、と仄は晴海には聴こえないよう小さく呟いた。
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