いとしいこどもたちに祝福を【後編】
晴海はきょろきょろと風弓と仄の傍を見回すと、不思議そうに首を傾げた。

「ねえ、かあさん…とうさん、どこにいっちゃったの?」

「…うーん、出稼ぎ?」

「うちにおかねないから?」

「そんなとこかな」

ある意味間違ってはいないけども。

突っ込みたくて仕方ないが、話がややこしくなりそうなので風弓は何とかそれを堪えた。

「…はる、あちらの方に母さんのこと紹介してくれる?」

「うんっ」

晴海は嬉しそうに仄の手を引いて、二人の遣り取りを微笑ましげに眺めていた愛梨の傍へ駆け寄った。

「あいりさん、あのね、まえにはなししてたうちのかあさん!」

今の晴海にしては珍しく饒舌に、愛梨に声を掛ける。

愛梨は柔らかく微笑んで仄に会釈した。

「陸の母親で、愛梨といいます。初めまして、晴海ちゃんのお母様」

「こちらこそうちの娘がお世話になってます。あたしのことは仄で構わないし、そんなに畏まらなくても。堅苦しいの、苦手なんで」

我が母親ながら、大国の領主夫人相手に何て口を聞くんだと目眩がしたが、愛梨は嬉しげにくすくすと笑みを零して頷いた。

「まあ…うちの人と一緒。それじゃあ、仄さん」

「はいよ」
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