いとしいこどもたちに祝福を【後編】
――そのとき、周の秘書官が慌ただしく部屋に飛び込んできた。

「失礼します、旦那様…!黎明の輝琉(きりゅう)様が間もなく到着するとの連絡を受けたのですが…」

「え…」

輝琉とは――黎明の領主の名ではないか。

先日の来賓の接待をしたときに、ちらりと挨拶を交わしたのを覚えている。

「夜に会談の予定が、随分と早いお越しじゃねえか。すまない陸、晴海ちゃんのお母さんには悪いんだが、少しだけ待ってて貰ってくれ。流石の俺も目上の領主は待たせられないからな…」

「待って父さん!黎明の領主が、何でわざわざ改まってうちに来てるの」

「黎明も今回の件で、やっと架々見を警戒し始めたみたいでな…?薄暮に圧力を掛けるための戦力を集め始めてるんだ。その一環として、うちの霊媒師たちの力を貸りたいと言ってきてる」

「!」

黎明は薄暮相手に、戦争でも仕掛けるつもりか。

そんなことをされたら、残された月虹の能力者たちが駆り出されてしまう上、充の居場所を探すどころではなくなってしまうかも知れない。

「父さん、まさかっ…」

「大丈夫だよ、春雷は戦争には荷担しないし戦争も起こさせない。ただ、ここ最近向こうが何度断ってもしつこく交渉を持ち掛けてきててな。今日はとうとう直接交渉しに来たって訳だ。全く、いい加減に…」

ふと、椅子から立ち上がった周の言葉が不意に途切れる。

「…?」

――次の瞬間、周の身体がぐらりと大きくよろめいた。

「父さんっ?!」

だが倒れ込む寸前に、周は自力で机の端に掴まって踏み留まった。
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