いとしいこどもたちに祝福を【後編】
小さな頃からずっと、何でも出来るしっかり者の兄に憧れていた。
兄を他者から誉められると、まるで自分のことのように誇らしかった。
今でも自分は兄のようになりたくて、少しでも兄に追い付きたくてしょうがない。
「髪や眼がどんな色だって、兄さんは俺の大好きな兄さんだ。それに、誰が何て言おうと、兄さんが家族だって思ってくれてるなら俺や母さんはそれだけで十分なんだから」
だから、泣かないで、兄さん。
京は笑っていたが、何だか泣いているような気がして、陸はその頬に両手で触れた。
「…そっか………ん、有難う」
嘗て晴海の言葉が自分を救ってくれたように、自分の言葉がせめて少しでも兄の心の翳りを晴らす力になればいいのに――
「……それに、輝琉の言うことは尤もだもの。俺は、都合のいいときばかり父さんや兄さんに庇われて領主の息子としての覚悟なんて全然ない」
「陸、それは…」
「だから、せめて何か俺にも出来ることがあるなら言ってよ。何なら俺、父さんの調子が戻るまで時間稼ぎで黎明へ行ったっていい」
「…そんなことする必要ない。それにお前の役目は、晴海ちゃんを守ることだろ?彼女の傍から離れてどうするんだよ」
「解ってる!でも…また春雷に住む人たちが巻き込まれるようなことは起こしたくないんだ…!」
陸は、春雷が月虹の能力者たちに襲撃された夜のことを思い出していた。
あのとき受けた損害はまだ完全に復旧した訳ではない、まだ建て直しや修繕途中の家屋は幾つもある。
「もし彼女の力が黎明や薄暮に知られて悪用されるような事態になれば、それこそ各地に甚大な被害が及ぶ。それにもし、仮にでも輝琉の要求に従えば春雷は黎明と盟約を結んだと見なされるよ」
「……っ…」
京の言う通り――今のままでは相手が春雷か薄暮のどちらかに変わるだけで、戦争が起こること自体は避けられない。
自分たちは薄暮の国を打ち負かしたい訳ではなく、架々見と月虹の思惑を食い止めることなのに。
兄を他者から誉められると、まるで自分のことのように誇らしかった。
今でも自分は兄のようになりたくて、少しでも兄に追い付きたくてしょうがない。
「髪や眼がどんな色だって、兄さんは俺の大好きな兄さんだ。それに、誰が何て言おうと、兄さんが家族だって思ってくれてるなら俺や母さんはそれだけで十分なんだから」
だから、泣かないで、兄さん。
京は笑っていたが、何だか泣いているような気がして、陸はその頬に両手で触れた。
「…そっか………ん、有難う」
嘗て晴海の言葉が自分を救ってくれたように、自分の言葉がせめて少しでも兄の心の翳りを晴らす力になればいいのに――
「……それに、輝琉の言うことは尤もだもの。俺は、都合のいいときばかり父さんや兄さんに庇われて領主の息子としての覚悟なんて全然ない」
「陸、それは…」
「だから、せめて何か俺にも出来ることがあるなら言ってよ。何なら俺、父さんの調子が戻るまで時間稼ぎで黎明へ行ったっていい」
「…そんなことする必要ない。それにお前の役目は、晴海ちゃんを守ることだろ?彼女の傍から離れてどうするんだよ」
「解ってる!でも…また春雷に住む人たちが巻き込まれるようなことは起こしたくないんだ…!」
陸は、春雷が月虹の能力者たちに襲撃された夜のことを思い出していた。
あのとき受けた損害はまだ完全に復旧した訳ではない、まだ建て直しや修繕途中の家屋は幾つもある。
「もし彼女の力が黎明や薄暮に知られて悪用されるような事態になれば、それこそ各地に甚大な被害が及ぶ。それにもし、仮にでも輝琉の要求に従えば春雷は黎明と盟約を結んだと見なされるよ」
「……っ…」
京の言う通り――今のままでは相手が春雷か薄暮のどちらかに変わるだけで、戦争が起こること自体は避けられない。
自分たちは薄暮の国を打ち負かしたい訳ではなく、架々見と月虹の思惑を食い止めることなのに。