いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「まあ、あんな話が飛び出して動じないほうが難しいよな。いずれにせよ非能力者の輝琉や占部は何も気付かなかっただろうし。本当はお兄ちゃん、お前の成長を喜んでやりたいんだけど…今はそうも言ってられない」

「…ごめん、兄さんは上で待ってろって言ってたのに」

悄気(しょげ)る陸に、京は困ったように笑って見せた。

「お前を同席させたくなかったのは、勿論縁談の件もあるけど…占部の伯父が来ていたせいだよ」

「あんなの、俺は平気なのに」

陸が小さく首を振って見せるも、京は大きくかぶりを振った。

「僕が、嫌なんだ。伯父が僕の話題に触れる度、母さんやお前を卑下するのを聞くのは」

「兄さん…」

「伯父が“母様”の存在を尊重したい気持ちは解るよ。けどそのせいで、僕は何も悪くない母様のことすら疎んじてしまいそうになる。自分にも占部の血筋が流れていることに、嫌気が差して冷静でいられなくなるんだ…っ」

――兄が抱いている劣等感は、まるで月虹にいた頃の自分と少し似ている。

架々見は頻りに自分の銀髪を綺麗だと口にしていたが、その度に酷く自分が惨めで疎ましいものに思えた。

京は占部の言葉を耳にする度、愛梨や陸を貶されたことに対する憤りと自身に対する過度な称賛に、激しい苛立ちを覚えるのだと言う。

「…僕は容姿だって、占部の家系寄りだろう?眼の色も、髪の色も、春雷の人間らしさなんて欠片もない」

駄目だ――そんな風に、自分を嫌いにならないで欲しい。

「俺は兄さんの蒼い眼、好きだよ。雲一つない明るい青空みたいだ。髪の色だって、父さんとお揃いで昔から羨ましかった」

率直に自分の気持ちを伝えると、京は驚いたようにその空色の眼を丸くしたのち、少し照れ臭そうに破顔した。

「…陸の髪は母さんとお揃いだろ?僕はお前のほうが羨ましいよ」

「うん。だからお互い様だよ?それに俺、兄さんが誉められるととっても嬉しいんだ。俺が貶されたことなんてどうでも良くなるくらい」
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