いとしいこどもたちに祝福を【後編】
――だが、陸は動かなかった。

「陸…?」

そっと名前を呼ぶと、陸は返事をする代わりに見開いた深紅の眼から大粒の涙を零した。

次いで、生気を失っていた両眼に少しずつ光が戻り始める。

「違う……違、うっ……俺はっ…兄さんと争いたかったんじゃあない…っ兄さんのことが大好きだったんだ…!けど腹違いの弟だから俺は嫌われてるんだって思い込んで、それでっ…」

小さな子供のように泣きじゃくりながら、陸は滔々(とうとう)と言葉を紡ぎ続けた。

「生まれて来なければ良かったって、言ったんだっ…!何で兄さんがそれを聞いて俺を叱ったのか、ちゃんと考えれば解った筈なのに…っ」

「……陸、もういいよ」

「本当は嫌いだなんて、一度も思ったことない…っ!!」

「うん、解ってる」

京は陸の頭を、周のようにわしわしと撫でてやりながら苦笑した。

「――っ馬鹿な…!何の力も持たないただの小娘が、我々の施した洗脳を解いただと…?!」

如月が口惜しげに歯噛みすると、香也は存外落ち着き払った様子で溜め息をついた。

「落ち着け、如月。短期間で施した洗脳が何かの弾みで解け易いことは、風弓のときに確認済だろ」

「くそっ…才臥、また才臥か!父親と息子のみならず、娘までもが私の邪魔をするのか!!」

それでも怒りが収まらないらしい如月は、憎しみと苛立ちが込められた眼差しでこちらを睨み付けた。

「姉ちゃん!」

「風弓っ…」
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