いとしいこどもたちに祝福を【後編】
「俺や風弓の洗脳は解けたのに、どうして慶夜は…」

「洗脳を受けてた時間が短かったからじゃねえのか?とは言え俺やお前だって、一歩間違えれば自分の肉親を殺してたかも知れない訳だし…」

たまたま運が良かっただけかもな、と風弓は項垂れた。

「――…記憶、じゃないかな」

ふとそう呟くと、一同が一斉にこちらを振り向いた。

「え、えっと…憶測なんですけど。二人の共通点は記憶があることじゃないかなって。慶夜は…夕夏や賢夜が判らなかったから……」

「確かに…如月は兄さんの動揺を誘うために敢えて俺の記憶を元に戻したんだ。それが逆に良かったのかな」

すると陸と風弓は顔を見合わせた後、少し考え込むように眼を伏せた。

「……俺は、自分が溺れさせちまった姉ちゃんを死なせたくない、それだけをひたすら念じてるうちにいつの間にか洗脳が解けてた。陸はどうだった?」

「あのときは…これ以上兄さんを傷付けたくない、如月の命令に従いたくないって必死に考えてた」

「成程ね…陸も風弓くんも記憶がある状態、尚且つ肉親の生死に関わる状況下で洗脳に打ち勝ってる訳か。如月はこのことに気付いてるのかな…」

「じゃあ慶夜も、記憶が戻れば洗脳を解けんのかな。けど…そもそも月虹の奴ら、どうやってみんなの記憶を管理してるんだ?」

(あれ?確かそれは…)

「左腕にある制約の魔法だよ、これが対象者の記憶も制御してる。現に金砂の双子くんは制約の解除後に記憶を取り戻したし、記憶と能力が戻ってる今の陸からもその気配が消えてる」

目の当たりにした葵と茜の実例を元に京が説明すると、陸もそれに続いて頷いた。

「うん…多分如月は、兄さんと俺を争わせる間だけのつもりで制約を一旦解除させたんだろうな」

「そう、だったのか…でも俺、今正に能力が使えない状態だけど記憶は無事だぜ?」

「君の場合は記憶を奪う必要がなかったんじゃないか?君は才臥さんと一緒に月虹へ行ったんだろう?」
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