まんなかロックオン


「び、びっくりした!なに、自販機行ってたの?」

「うん、おまたせ。寒いでしょ?あげる」

そう言って、ココアの缶が手渡される。コウは、コーヒーの缶を持っていた。

「えっ…い、いいの?お金…」

「いいの。練習付き合ってくれたお礼」

それ、逆じゃないだろうか。私が付き合ってもらっていたのだ。

けれどこういうとき、こいつは意地でもおごろうとする。これ以上言っても、多分意味はないだろう。

缶を開けながら校門へ足を動かしはじめたコウを、ちらりと見る。缶を開けると、ココアの甘い香りが広がった。


「…ありがと」


一応目を見て言うと、コウは「どういたしまして」と笑った。ココアを一口飲む。喉元から、暖かくなっていく。

すっかり暗くなった辺りを、街灯が照らす。私は、わずかに星の見える夜空を見上げた。


< 10 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop