まんなかロックオン
「び、びっくりした!なに、自販機行ってたの?」
「うん、おまたせ。寒いでしょ?あげる」
そう言って、ココアの缶が手渡される。コウは、コーヒーの缶を持っていた。
「えっ…い、いいの?お金…」
「いいの。練習付き合ってくれたお礼」
それ、逆じゃないだろうか。私が付き合ってもらっていたのだ。
けれどこういうとき、こいつは意地でもおごろうとする。これ以上言っても、多分意味はないだろう。
缶を開けながら校門へ足を動かしはじめたコウを、ちらりと見る。缶を開けると、ココアの甘い香りが広がった。
「…ありがと」
一応目を見て言うと、コウは「どういたしまして」と笑った。ココアを一口飲む。喉元から、暖かくなっていく。
すっかり暗くなった辺りを、街灯が照らす。私は、わずかに星の見える夜空を見上げた。