まんなかロックオン
「………ねえ」
「ん?」
暗いから、きっと顔は見えない。今なら、訊けるんじゃなかろうか。赤い顔を、隠したまま。
「…昨日の、本気?」
…ああ、しまった。こちらの顔が見えないなら、こちらからも相手の顔は見えないのだ。
いまいちコウの表情が読み取れなくて、不安になる。…まだ返事をする気もないくせに、こんなこと訊くのは、ひどいのかもしれない。
「…本気だよ?」
少しの間のあと、穏やかな声が聞こえた。普通、戸惑うならコウのほうなのに、なんだか余裕そうだ。
「…そう」
「うん」
何故か声色が嬉しそうで、やはりこいつは変だなと思った。
空気は冷たいはずなのに、私の体温は高い気がする。私までおかしくなったか。
…喉の奥がつまって、上手く息を吸えない。何かが、胸のなかで暴れている。頭の芯が、熱い。
橙色の街灯の下で、コウの顔が見えた。