まんなかロックオン
「俺も、男子のなかでは高い方じゃないし」
ね?と言って、コウがドリブルをやめ、ボールを持つ。そのまま、シュート。
リングをすぽりと通ったボールは、トン、と音を立ててフロアに転がった。
「…ばぁか」
呟いて軽く睨むと、コウは柔らかく笑うだけだった。
*
時間は八時をまわったところで、『そろそろ帰ろっか』とコウが言い、私達は体育館を出た。
制服に着替え終わり、部室を出る。駐輪場を覗いてみるが、コウの姿はない。まだ、部室にいるのだろうか。
「さっむ…」
季節は、冬。外の空気は寒くて、手が凍りそうだ。息を吐くと、白く色がつく。手袋、持ってくればよかった。
部室の近くでコウを待っていると、突然頬に暖かいものが当てられた。
「はい」
驚いて横を見ると、それはホットココアの缶。振り返ると、コウが立っていた。