まんなかロックオン
…だから、だめなんだってば。意識しちゃ、だめなんだってば。
コウがあんなこと言うから、悪い。こんなの、錯覚。全部、気のせい。
そう思うのに、頬の熱はいつまで経っても止んではくれなかった。
*
「今日の麻佑、顔怖いよ」
翌日の練習の、休憩時間。
女バスでいちばん背の高い一年、一条美佳が、その腰を曲げて私の顔を覗き込んだ。
…そのしなやかな腰をわざわざ曲げてまで言うセリフが、それですか。
「…そんなことないし」
「ええー?怖いって。確かに麻佑は、普段からあんまり笑わないけど。なんか、いつにも増してってかんじ」
自分があまり愛想のいいほうでないのは、わかっている。だが、他のメンバーにそう思われるくらい、今日の私はおかしかったらしい。
いや、自覚はある。信じ難い、信じたくないほどに、おかしかった。