まんなかロックオン


…だから、だめなんだってば。意識しちゃ、だめなんだってば。

コウがあんなこと言うから、悪い。こんなの、錯覚。全部、気のせい。

そう思うのに、頬の熱はいつまで経っても止んではくれなかった。





「今日の麻佑、顔怖いよ」


翌日の練習の、休憩時間。

女バスでいちばん背の高い一年、一条美佳が、その腰を曲げて私の顔を覗き込んだ。

…そのしなやかな腰をわざわざ曲げてまで言うセリフが、それですか。


「…そんなことないし」

「ええー?怖いって。確かに麻佑は、普段からあんまり笑わないけど。なんか、いつにも増してってかんじ」


自分があまり愛想のいいほうでないのは、わかっている。だが、他のメンバーにそう思われるくらい、今日の私はおかしかったらしい。

いや、自覚はある。信じ難い、信じたくないほどに、おかしかった。



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