まんなかロックオン


「スリー入らなくても、麻佑、上手いじゃん」

「上手くないし!背低いから、その分練習しなきゃだし…!」

そう。私は、百四十八センチという低身長。他の女バスのメンバーは、百六十超えてるひともいるのに。

その分不利だし、スリーだって投げる力が強くなきゃ、ゴールまで届かない。

高校に入って、みんなが度々スリーを入れていくのを見て、焦りを感じているのもある。毎週残って練習することで、やっと届くようにはなったけど。


「…百六十センチある奴には、わかんないですよーだ」

私の背の成長が中学二年でストップしたのに反して、こいつは今もなお伸び続け、身体測定の度にその数値を更新し続けている。

コウは「そんなことないよ」と笑うと、リズム良くドリブルをはじめた。

ダン、ダン、という音が、賑やかさを失った体育館内に響き渡る。

それは、今こいつとふたりきりなのだということを、改めて感じさせるものだった。


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