三十路で初恋、仕切り直します。
まさかありえないことだと思いつつ、念のためにぺろりと布団をめくってみると、何も身につけていない法資の下半身がそのまま目に入る。
「きゃあっ、なななんで何も着てないのよっ」
「勝手に見ておいて何言いやがんだ」
呆れたように言いながら法資が泰菜の顔の両側に手をついた。
「なんでって、こんな場所でそんな分かりきったこと訊くか、普通」
そのまま泰菜の上にのしかかってくる。
「え?あの、ちょっと」
男として意識したこともなかった、それも12年振りに会う幼馴染の熱い体温。裸の素肌に直に感じて、思いがけないその人肌の心地よさにうっとりしかけてしまう。
「ま、待って、な、何するの」
「さすがにもう何もしねぇよ。一晩で三回以上とかサルだな、俺もお前も。盛った10代のガキじゃあるまいし」
「さ、さんかい……?」
何が、とは訊くことが出来なかった。
体の奥のあらぬ場所が熱を持ったようにじんじん痺れていることに気付いてしまったからだ。おまけに腰のあたりがやたらと重く、内股のあたりには筋肉痛のような引き攣った疲労感まである。
アルコールの抜けきらない頭が重くて昨晩のことはよく思い出せないが、どういう行為の結果こうなるのか、分からないと言えるほど無垢でもウブでもない。
「……あー!!ばかばかばか。飲みすぎたぁ……」
長い人生お酒の大失敗なぞ一度や二度くらいあるだろうが、問題はそこではなく。
あやまちの相手が法資だったことに泰菜はひどく動揺していた。よりにもよって、相手が子供のときから頭の上がらなかった口の悪い幼馴染だなんて。
「……もう、30にもなって何やってんのよ……」
まるで家族のような、自分のことをよく知っている相手と関係を持ってしまったことはいたたまれなかった。見知らぬ行きずりの男と関係してしまった方がまだ冷静でいられただろう。
情事の後という状況以上に、説明しがたい猛烈な恥ずかしさでのたうつ泰菜だが、なぜか法資は鼻歌でも歌いだしかねないほど上機嫌だった。笑顔で泰菜が包まる布団に手を伸ばしてくる。
「勝手に人様のモノ見やがったんだ、おまえのも見せてもらっておくか」