三十路で初恋、仕切り直します。
泰菜を悠然と見下ろしながら、泰菜の股の辺りに掛かっている布団を剥いでこようとする。
「や、やめてっ」
「今更だろ」
「で、でもっ今素面!正気なの!……ねぇ、お願い法資、許してよ」
涙目で必死で抵抗していると、意外なくらいあっさり法資は身を引いた。助かった、と思うのも束の間。
「ま。いっか。おまえの体は昨日さんざん拝ませてもらったしな」
「ななな、なっ……!」
「デブってわけじゃないのにすげぇやわらかくて、さわり心地も正直かなり好みだったし」
とんでもない発言にくらくらしてくる。
「覚えてないのか?まぁおまえかなり酔っ払ってたしな。自分で脱ぎだしたのも覚えてないんだろ」
「う、うそ」
前後不覚になるくらい酔ったことはこれまでにもあったが、恋人でない人とベッドインしたことなんて一度もなかった。自分がそんな失敗をしたとは考えられないが、でも法資がこんな意味のない嘘を吐くはずがないから事実なのだろうかと泰菜は信じかけてしまう。
「ひょっとしてわたしって、脱ぎ癖があったの……?」
泰菜の苦悩に気付かないのか、気付いていながらあえてなのか、法資はことさら面白そうに口にする。
「おまえ思ってたより痩せてたけど、悪くないな。体の相性も良さそうだし」
「……か、からだのあいしょう……っ?!」
つい最近悪い意味合いで言われた言葉を、法資にはまるで褒め言葉のように言われる。
「何いちいち驚いてんだよ。だいたい昨日はおまえから誘ってきたんだぜ?『お願い、法資、わたしを抱いて』って」
「……うそ……」
いやいや、ないだろ。甘い声でおねだりとか、自分のキャラではない。まして相手は法資だ。でも女に不自由しないであろう法資がこんな意味のない嘘を吐くはずがないわけで……。