三十路で初恋、仕切り直します。
「そっか、杏奈お腹全然目立たないけど今赤ちゃんいるんだ、おめでとう」
和やかな近況報告が交わされる久々の再会の場を、泰菜も友人たちもたのしんでいた。
「裕美ちゃんの旦那さんは元彼の梅本さんだったんだぁ」
「5年も付き合ったから、やっぱいちばんしっくり来ると言うか。それで元鞘よ」
「泰菜はまだ聞いてなかったっけ?エリカ様は今三人掛け持ちなんだって」
「わぁ。すごいねエリカ。さすが肉食系美女」
昨夜の失敗もまだ記憶に新しいというのに、泰菜はワインを片手にほろ酔い気分だった。気分をますますたのしくさせるお酒のおいしさに、お祝いの席なんだしと言い訳しつつ二杯目のおかわりまでしていた。
「人のことより、泰菜はどうなのよ」
訊いてきたのはエリカ様だ。やっぱり突っ込んでくるかと諦めつつ、脳内では答える内容をざっとシュミレーションし始める。
「泰菜の彼、職場の先輩のオサムさんって言ったっけ?」
「あ、うん、……」
「もうすぐ結婚?あたしには『トミタって言ってもふつうだよ』っとか言ってたけど、あんないい車乗ってるんだもの、やっぱトミタの男って年収いいんでしょ?」
あてこするようにいわれる。やはりエリカには先ほど法資に送ってきてもらったところを目撃されたようだ。
「それがさ、そのオサムさんとは最近別れたばっかなんだ。残念ながら」
「じゃあ別の人?それでもうあんないい車乗り回してるハイクラスっぽい男捕まえられたの?」
エリカはちょっと意地悪く訊いてくる。
「え、泰菜、ハイクラスってどういうこと?」
昔から恋バナが大好きで結婚しても子供が出来ても変わらない杏奈が、興味深々の顔で食いついてくる。
「泰菜ってば、『イルメラ』で送ってきてもらいながら、わたしたちには新しい彼のこと秘密にするつもりみたいよ。ねぇ?」
「イルメラって、もしかしてさっきエリカが見た車?泰菜が乗ってたの?」
「素敵なブルーのスポーツカーから降りてくるところをばっちり見てましたとも」
誤魔化すことは許さないとばかりに、エリカは気の強い目で見つめてくる。