三十路で初恋、仕切り直します。
「まあまあ、今日は裕美のお祝いなんだし、泰菜のことはまた今度でもいいじゃない」
「さっすが台湾の実業家掴まえた弥生ちゃんは余裕ね」
仲間うちでいちばん穏やかな性格の弥生がやんわりと話を流そうとするも、エリカはそれを容赦なくあしらう。
「でもあたしは気になっちゃうなあ?ひとにばっか近況報告させて、自分のことはヒミツにするのってずるくない?」
口を割ろうとしない泰菜にだんだん喧嘩腰になってきたエリカに、みんなはまあまあと宥めつつも強く止めたりはしない。
出来たら自分の代わりに泰菜から話を聞き出してほしいという消極的な期待が、面白そうな顔を隠せずにいるみんなの表情から感じ取れた。『イルメラ』の男のことを話すことを期待されているのが、いやでもわかる。
「たしかに『イルメラ』、乗せてもらってきたけど……」