君想歌
「どうして?」

「いつも栄太郎と一緒に居る……」


むぅっと口を尖らせる和泉に
栄太郎は吹き出した。


「もう……っくく…和泉は」


一方、吹き出された理由が
分からずキョトンとしている
和泉。


「だったらさ。
俺が和泉の方が大切だって
解らせてあげようか?」


「へ?」


間抜けな声を出した和泉の腰に
栄太郎は手を回す。


黒猫は吉田の手から飛び降り
文机の下へと潜り込む。

「馬鹿だね。和泉は」

反射的に出た和泉の手を
左手で掴み唇が合わせる。


少しいつもより甘いのは
甘味のせいだろう。


普段ならこれで終わりのはずが
今日は長い。


「っ……」

力の抜けた身体は吉田の腕に
捕らえられて逃げ出すことは
許されない。


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