君想歌
額に手を当てた土方には
悩みがもう一つ。


「土方副長。ほんま頼むわ〜」


開いた襖から顔を出した山崎に
土方は筆を置く。


書きかけの書状を隅に追いやり
文机に肘をついた。


医療担当も兼ねる山崎は連日
隊士たちの治療に追われる。


しかし、

「姉ちゃん、怪我の具合。
まったく見せてくれんねん」


自分でやる、の一点張りの
和泉は頑なに治療を拒む。


組の立場上、命令も使えず。

結局、土方に頼むしか道は
なくなった。


「分かった。俺がやる」


土方は渋々道具を受け取ると
重い腰をあげた。


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