君想歌
部屋に居るはずの和泉に
襖越しに声を掛ける。

「入るぞ」

返事が返ってくるのも待たず
部屋の中に入る。


綺麗に整頓された室内は特別
変わったことは無い。


部屋の端に寄せられた布団に
背を預けた和泉の膝には
書物が開いたまま乗っていた。

正座を崩した格好で
上半身は布団に倒れている。


読んでいる途中でそのまま
寝てしまったらしい。


土方はその和泉を軽く揺する。

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