君想歌
道場から聞こえる上段者の
打ち合う音に隊士が集まる。

人が人を呼び隊長格の二人は
好奇心旺盛な隊士たちの良い
餌になる。


斎藤と和泉など。

滅多に見られる組合せでは無い。

この場に居合わせた者は
運がよいと言える。


「ちっ……気が散る」

紙一重で攻撃を避けた和泉は
小さく呟いた。


稽古指南以外にこうやって
人に見られるのを和泉は嫌う。

ぴりりとした和泉に山野が
あわあわとしている。

先程から攻撃に苛立ちが
見え隠れするのに山野が
気がつかない訳がない。

「悪いけど。
さっさと終わらせる」


だんっと踏み込んだ和泉は
斎藤の胸を狙う。


対する斎藤も和泉の首を
一直線に狙っていた。


ぴたりと二人の剣先が止まると
隊士たちから歓声があがる。


.
< 588 / 633 >

この作品をシェア

pagetop