君想歌
二人の視線は自分の剣先に
向いていた。


真っ直ぐに互いの急所を抑えた
完璧な剣筋。


当たる寸前で止められているが
実戦だったなら相討ちで終わる。

「流石だな」

「あーあ……」

一歩退いて木刀を下げ
斎藤は汗を拭う。

周りの隊士たちは両者の勝敗で
賭けをしていたらしい。

引き分けという結果に
残念そうに息を吐いていた。

「いっ和泉さーん!!」

がばっと山野に着物を被せられ
女らしからぬ声を上げる。

「不味いです不味いです!!」


暑いからと払い除けようとする
和泉の手を必死に山野は止める。


「そんな格好困りますー!!」


散々動き回った和泉の格好を
目の保養にする隊士ら。

容赦なく斎藤の一撃が
飛んできていた。

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