君想歌
暴れに暴れた和泉は道場の外で
へばっていた。


「……何してたんですか」

隊士たちの騒がしさに
部屋から沖田は出てきた。

影になっている縁側に寝転ぶ
和泉を腰に手を当て見下ろした。


見下ろす沖田とばっちりと
目が合う。

「一くんと試合してた」

和泉の隣に腰を下ろした沖田は
ほどかれた和泉の髪を触る。


「危険な仕事してませんよね?」

空をぼうっと見つめていた
和泉にかけられた言葉。


「してないよ。大丈夫」

「本当ですか?」

「うん」

「信じますよ」

答えを返すだけでは足りない。

そう感じさせた沖田の物言いに
そっと手を伸ばした。

ふわりとした髪を数回撫でる。

安心したように沖田は笑う。

普段より青白いその顔に
僅かに胸が騒いだ。


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