君想歌
土方の肩の上で散々喚き散らす。

その恥ずかしい姿を吉田に
笑われているなんて気が付かず。


そのまま和泉を肩に乗せたまま
葉月屋の敷居を跨いだ。


「土方はん。
この子が和泉はん?」


赤を基調とした派手な着物を
着た遊女が土方の前に立つ。


「じゃあ。頼むぞ」


ドサリと彼女の前に和泉を
落とすと土方は部屋へと
入っていく。


「え?ちょっ、土方っ」


慌てて後を追おうとした
和泉の肩に手を乗せた遊女。

君菊は微笑んだ。


「和泉はんは。
着替えのお時間や」


「へ?」


この時くらい間抜けな返事を
した事は無かっただろう。


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