ノーチェ
「ねぇ、薫。」
「んー。何?」
啓介くんから新たにビールを注いでもらうと
薫は一気にそれを半分程飲み干した。
「話が、あるんだけど。」
いつもとは違う、あたしの真剣な面持ちに薫の瞳が揺れてぶつかる。
「何?愛の告白?」
だけどすぐにいつも通りにおちゃらけた薫は
イスの背もたれを正面に座って肘をつき、あたしを見た。
端整な薫の瞳に、戸惑うあたしが映る。
…きっと、薫はわかってる。
「百合子さん、来たよ。」
「…やっぱり?」
手に持ったビールと引き換えに、煙草を口にした薫はライターで火をつけた。
そして、力なく吐き出された煙がジャズに溶けて消えてゆく。
「…百合子、何だって?」
さっきまで笑顔だった薫の表情は、先を察してか険しくなった。