Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 入口でみのりがしり込みすると、女の子たちは笑いながらため息をつく。


「しょうがないなぁ~。いつもの威勢はどうしたの先生?」


「じゃあ、一緒に入ってあげるよ。」


と、みのりの手を半ば強引に引っ張って、暗い迷路の中へと足を踏み入れた。


――ああ……、入ってしまった……。


 中はエアコンが効いているため、思ったより暑くはなかったが、みのりは手のひらにじっとりと汗をかいていた。

 通路はやっと一人が通ることができるくらいで、三人で手を繋ぐのは難しい。みのりは左手を牽かれて、三番目についていく。

 途中、ふわりと頭上から薄い布が落ちてきた。涼感素材の布らしく、顔に当たるとヒヤッとする。


「……っっ!!?」


 みのりは思わず、声にならない悲鳴をあげた。あまりの恐怖に、声帯さえも制御が利かないらしい。


「大丈夫?先生。でもまだ序の口よ。」

「ふふ……、先生。手のひらすごい汗。」


 生徒たちは楽しんでいるようだが、みのりは本当に泣き出したくなった。

 ようやく目が慣れてきて、何となくだがうっすらと、前を歩く女の子や黒く塗られた段ボールが判別できるようになった。
 すると、今度は足に冷たい空気が当たる。



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