Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 文化祭実行委員会によるグランドフィナーレが体育館で行われている最中、みのりは大分遅れて体育館に姿を現した。
 気持ちを落ち着けて、平常心を取り戻すのに、随分時間を要してしまった。


 昨日と同じ体育館の2階から、1年5組の生徒たちの列を見下ろし、男子生徒を一人一人確認していく。迷路の暗闇の中で、捕まえられた時の感覚を思い出して、あの時の犯人を探した。


 もしかして、きつく叱られたりした子が、仕返しをしたのかもしれない。……でも、あの腕からは、そんな悪意は感じられなかった。


――それにやっぱり違う……。


 みのりは思考を繰り返して、思い直した。
 あの腕や体つきは、もっとがっちりしていた。もしかしたら1年生じゃないのかもしれない。……でも、だったら誰が1年5組の教室にいたのだろう……?


 身体を締めつけたあの腕……。


 何故だか、みのりはあの腕を知っているような気もする。しかし、考えようとすると、おぼろげで曖昧な記憶の方から逃げていく。

 結局、いくら考えても犯人が判るはずもなく、犯人探しをする度に、あの迷路の中での出来事と感覚を思い出してしまう。思い出す度に動悸は早まり、じっとりと汗が出てきて、精神衛生上よくない。


 みのりは一つ大きなため息を吐き、〝犯人探し〟をすることをやめた。



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