Rhapsody in Love 〜約束の場所〜





 あの腕の持ち主は、遼太郎だった…。



――そうよ。あの腕を私は知っている…



 かつて、職員室で、あの遼太郎の腕を掴んで引き留めた。


 触れはしないが、毎朝隣に座る遼太郎の、白い制服のシャツから伸びる日に焼けた腕…。

 その腕が、みのりの身体に巻き付き、そして…!



 メールの文面に、「あれはわざとじゃない」とあった。「あれ」とは、背後からみのりを捕まえたことではない。それは、わざとやったことだ。

 では、「あれ」とは…?

 きっと、手のひらがみのりの胸を触ってしまったことだ。ということは、遼太郎はみのりの胸を触ったことを、自覚しているということだ。


 みのりは頭を抱え込んで、ベッドの上で悶絶した。

 これまで、手を握りたがったりした男子生徒はいたが、あんなことを生徒にされたのは初めてだ。

 自分の中に渦巻く、恥ずかしさだけでは説明しきれない感情を、どう処理していいか分からなかった。


 これからどんな顔をして、遼太郎に会えばいいのだろう。ましてや、個別指導はどうしよう。会う度に、このことを思い出していたら指導どころではない。




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