Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 しばらくして、みのりはベッドに仰向けになり、何もない天井を見据えた。心臓の上に手を置いて、呼吸を落ち着ける。


――……大丈夫、大丈夫よ。私が気にしなければ、いい話なんだから。


 みのりは必死になって、自分に言い聞かせた。
 みのりが動揺したら、罪悪感に駆られている遼太郎も困ってしまう。あのくらいのこと、何のことはない。時が経てば、記憶も薄れて何もなかったかのように、きっと感じられるようになる……。


 それに、あれが誰だったかが判明したことで、ちょっと安心した部分もあった。遼太郎だったのは意外であり、恥ずかしく思う気持ちに変わりはないが、嫌悪を抱く感覚は全くない。
 生理的に受け入れられない相手だったら…と考えると、却って「遼太郎でよかった…」とさえ思えてくる。


 ようやく、みのりは感情を制御できて、起き上がれた。


「よし……!」


と、みのりは気持ちを切り替えると、携帯電話を手に取った。


『正直に言ってくれて、ありがとう。必要以上に怖がってしまって、恥ずかしいです。でも、大丈夫!気にしてないから、狩野くんも気にしないでね。 おやすみなさい。』



 みのりからのメールを読んだ遼太郎は、大きな息とともに罪悪感を呑み込んで、スマホを置く。勉強机の椅子に腰を下ろすと、机に肘をついて頭を抱えた。



< 130 / 743 >

この作品をシェア

pagetop