Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
進路指導室を出た途端に、遼太郎が険しい顔つきで口を開く。
「あんな例え、セクハラじゃないんですか?」
遼太郎の憤然とした様子に、澄子は諦めたように答える。
「さあ?セクハラかも知れないけど、みのりさんももう慣れっこだと思うわよ。高校は男の先生の方が多いから…。みのりさんは私と違って綺麗だから、よくちょっかい出されるだろうし。」
「…ち、ちょ、ちょっかいって、ど、どういうことですか?」
遼太郎があからさまに動揺した口調で訊いてきたので、澄子はしゃべりすぎてしまったとばかりに、口をつぐんだ。
遼太郎は、みのりが男性教師に何かいやらしいことをされているのではないかと、気が気ではなくなった。
「大丈夫、みのりさんだって子どもじゃないんだから、巧くかわしてるわよ。…それより、みのりさんに報告してきたら?随分気を揉んでたみたいだったから。」
「仲松先生が…?」
「口に出してはなかったけどね。」
澄子は目をくるっと回して、肩をすくめた。
ちょうどその時、職員室へ上がる階段を、息を呑むほどのみのりが駆け下りてきた。みのりは遼太郎と澄子がいることに気がついて、目は合わせたが口は開かなかった。