Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「先生…!」
すれ違う時に遼太郎が声をかけると、みのりは通り過ぎて階段の下で足を止めた。
「ちょっと、ごめん。大臣が帰るから見送れって言われてるの。すぐ戻るから狩野くん、話なら職員室で待ってて!」
と、言い残して走り去った。
職員室入り口の廊下の窓から、学校の玄関が見下ろせる。その玄関には、黒塗りの高級車が横付けされていた。
大臣と向かい合って、校長と教頭、事務長、井上先生、そして何故かみのりが挨拶をしている。大臣は、みのりの手だけ取って、肩を叩いた。
遼太郎の口がとがり、眉間に皺が寄る。
そして、大臣は車に乗り込むと、車は滑るように校門を出ていった。
間もなく、みのりが職員室への階段を上がってきた。遼太郎を見つけて、息を弾ませながら笑顔をくれる。
急に、遼太郎の鼓動が激しくなり始めた。今日のみのりを間近で見ても、心臓はもつだろうか…。
「ごめんね。講演後のお茶だしで私の仕事は終わりかと思ってたんだけど、急に見送れって言われて…。」
それを聞いて、大臣がみのりを呼ぶように言ったに違いない…と、遼太郎は勘ぐった。