Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりがハッと口を押えて、遼太郎を見遣った。でも、話を振って気に留められてしまったからには、説明する必要に駆られる。
「大学院出てから仕事がないときがあってね。その時、親にさせられたのよ。うちの家って特殊だから、お付き合い上断れなくてね。でもって、このスーツを買ってもらったってわけ。」
みのりが何気ない世間話をしている間も、遼太郎はしっかりとレーダーを張り巡らせて、みのりの情報を聞き取っていた。
――先生は大学院まで出てるのか…。特殊な家ってどういうことだろう…?
そこで話が止まって、みのりが遼太郎に用件を切り出すように促す視線を投げかけた。視線が合うと、自然に微笑みをたたえる。
みのりが優しく微笑んだ時に、遼太郎の心臓は再び激しく鼓動を打ち始め、思考は停止してしまう。
遼太郎が何も言葉を返さないので、みのりは首を傾げて遼太郎の様子を窺った。
「どうかした?私、狩野くんのこと呼んでたっけ?」
と、みのりが本題を聞き出そうとしたので、遼太郎は何のためにここにいるのか、ようやく思い出せた。