Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「頑張れって言われても…。」
遼太郎は腰に手を当て、二俣を目で追い呟いた。
相手が教師のみのりの場合、どう頑張ったら二俣と沙希のように両想いになれるのか……。ましてや、恋愛の経験が皆無の遼太郎には、皆目見当もつかなかった。
次の日の朝、みのりが渡り廊下へ向かうと、遼太郎は既に長机に着いて、何やら書き物をしていた。
みのりが近づいても気がつかないので、何を書いているのか、そっと傍に行って覗いてみた。
前回渡した問題プリントの間違えたところを抜き出して、教科書や資料集を見て要点をまとめている。よく見ると、すでにみのりが渡したキティちゃんのノートではなかった。
真剣な表情をして、ひたすら文字を書いている、ノートに落とされたまっすぐな眼を見た瞬間、みのりの鳩尾にチクチクっと電流のようなものが走った。
息を呑んで、みのりは優しい切れ長の遼太郎の目を見つめた。そして、不意に体育大会でその目の上に傷を負っていたことを思い出す。
みのりは思わず腕を伸ばして、遼太郎の前髪を指で寄せて、傷跡を確認しようとした。