Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 ビクッ!と身を固めて、遼太郎はみのりを見上げた。反射的にみのりも手を引っ込める。

 目が合うと、自分が驚かされたわけではないのに、みのりの鼓動が突然速くなった。


「ご、ごめん。驚かせちゃったね。せっかく集中してたのに、ごめんね。」


 申し訳なさそうに言い、みのりは遼太郎の隣に座った。


 みのりが謝っているのに、何か応えたかったが、不意を突かれた衝撃で息が乱れていて、声にならなかった。

 みのりが触れた髪が気になって、そこに手をやる。すると、みのりはその遼太郎の大きな手を握って横にずらした。


 予想外のみのりの行動に、遼太郎は完全に固まった。視線は宙を捉え、握られた左手だけに意識が集まってくる。


「ここ、目の上、やっぱりちょっと傷跡が残っちゃったね。」


 みのりのもう片方の手で、傷跡をスッと撫でられる。ほんの一瞬触れられただけなのに、遼太郎は全身が爆発しそうになった。


 ほんの2か月前は、なんの躊躇もなくみのりを抱き締められたのに、想いを自覚しただけでこんな風に変わってしまった自分が信じられなかった。


< 292 / 743 >

この作品をシェア

pagetop