Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「あ、そうだ。ちょっと待ってて。」
遼太郎が一言も発せられない内に、今座ったばかりのみのりは席を立って、職員室へと戻っていった。
「はあぁ~…」
両手で顔を覆い、遼太郎は大きなため息を吐く。
まだ体は震えているが、何とか緊張を解こうと、大きな深呼吸を繰り返した。
するとすぐに、みのりは日本史の用語集を手に持って戻ってきた。
「これ、狩野くんにあげる。ノートづくりの役に立てて。」
遼太郎は手渡された冊子をパラパラとめくり、ところどころチェックが入れられてたり書き込みされていることに気が付いて、みのりを見た。
「先生が使ってる分みたいですけど、いいんですか?もらっても。」
「いいの。私はもっと専門的な日本史辞典を持ってるから。それに…」
みのりは次の言葉を探すように、少し途切れさせて、照れくさそうに笑った。
遼太郎はその間、ずっと胸をドキドキさせて、みのりを見つめた。
「それに、あげたいの。私が採用試験の苦しい勉強をしてた時に使ってた物だから、狩野くんに持っててもらいたいの。」