Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
話が一段落したので、遼太郎はサッと日本史のノートや教科書をしまった。
これから勉強をするのに何でしまうんだろう?という疑問が、みのりの顔に浮かぶ。その表情を確かめて、
「先生、今日はこれを持ってきました。」
と、遼太郎はラグビーの解説書を机の上に置いた。それに目を遣ったみのりがその目を見張って、次に遼太郎を見た。
「ラグビーのルールを教えてくれるの!?」
「昨日、約束したから。」
遼太郎は恥ずかしそうに、小さく笑った。
「でも、狩野くんの貴重な時間がもったいないし……。」
みのりが躊躇すると、遼太郎は首を横に振った。
「先生がこれからも試合の応援に来てくれるなら、知っててほしいし。」
断固とした口調で遼太郎が言うので、みのりは肩をすくめた。
「そう?……じゃあ、狩野先生。教えて下さい。」
と言いながらみのりは、きちんと膝を揃えて手をその上に置き、ペコリと頭を下げた。
その仕種の嫌味のない可愛らしさと、「狩野先生」なんて言われて、甘い動揺が遼太郎の全身を襲う。けれども、なんとか平常心を取り戻して机に向かった。
遼太郎がコホンと一つ咳払いすると、みのりは自分の備忘録のための小さいノートのきれいなページを出して、準備をした。