Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
ハーフタイムは5分間しかない。
ヘッドキャップを脱ぎ、肩で息をする選手たちが、江口を囲んで丸くなる。1年生が供するスクイズボトルを口にした後、真剣な顔をして頷き、「はい!」という返事が聞こえてくる。
防戦一方なので疲労感は尋常ではないはずだが、どの選手も充実感に満ちたいい顔をしている。
遼太郎も例外ではない。この決勝戦の舞台に立てたことを誇りに思っているように、口角が上がり目は輝き、引き締まった闘いの時特有の顔をしていた。
前半の戦況を見て、気持ちが折れそうになっていたみのりは、これを見て少し恥ずかしくなった。応援する方が先にしおれてしまってどうするのだろう。
どんよりしていた空模様が、いつの間にか雲が切れ、薄日が射すようになってきた。雲の合間から天使の梯子が降りてきて、芳野の選手たちを照らし出す。
恐れることなく戦う、大きな少年たちの勇敢な顔が輝いている。
その光景はまるで奇跡みたいに、みのりの胸に刻まれた。
選手たちは再び円陣を組んで、掛け声をかけてグラウンドへ散っていく。暖かい日射しも、彼らを応援しているみたいだ。
キックオフまでのわずかな時間、遼太郎が芝生スタンドを仰ぎ見て、みのりのところで目を止めた。遼太郎をずっと目で追っていたみのりは、この時、目が合ったように思った。