Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



 ボールの跳んだ行方を確認した遼太郎は、腰に手を当てて空を仰いだ。

 まだ荒い息を整えるように何度か大きく呼吸をしてから、開いた口を引き結んで、目を閉じた。


 相手の都留山高校は、彼らにとっては少々苦戦した試合の勝利と花園出場を果たして、皆が寄り集まり、抱き締めあって歓喜に沸いている。

 その声を聞きながら遼太郎は目を開け、


「終わった……。」


と、つぶやいて息を吐いた。


 芳野側、都留山側、双方の大きな歓声の中、ずっと遼太郎を見つめていたみのりは、堪えきれずに口を押えていた両手で顔を覆った。


 体中が震えて、涙が溢れてきて止まらなかった。


 試合に負けて悲しいのではない。
 劇的に決まった遼太郎のドロップゴールに、単純に感動しているわけでもない。

 あのドロップゴールの鮮やかな軌跡は、みのりの心を貫いた。
 それまでごまかし続けていた、みのりの本心を覚醒させた。


 それを、もう認めざるを得なかった。


――私……、狩野くんのことが好きだ……。…心の底から…。


 みのりはこれからもずっと、遼太郎に寄り添って生きていきたいと思った。


< 474 / 743 >

この作品をシェア

pagetop