Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
空へとまっすぐ伸びるゴールポスト。
あの間を、遼太郎のドロップキックのボールが通って行った。
今しか味わえないこの空気をみのりは胸いっぱい吸い込み、再び目を閉じる。胸に手を当てて、深く吸った息を吐き出した。
「澄ちゃん、帰ろうか…。」
みのりがようやく、そうつぶやくと、澄子は黙って頷いて芝生スタンドを並んで歩き始めた。
競技場の正面玄関の前を通りかかった時、江口から声をかけられた。
「江口先生、お疲れ様でした。」
みのりと澄子は口々に江口を労う。
「はぁ…、せっかく応援してくれてたのに、やっぱり勝てなかったねぇ…。でも、あいつらなりに全力を出し切って、良くやったと思うよ。」
江口はそう言って、苦笑いした。
澄子は微笑んで頷いていたが、みのりは遼太郎たちのことが気になった。
「選手たちは、どんな様子ですか?」
「スタンド席の軒下で、まだ落ち込んでるよ。しばらくそっとしとこうと思ってな。……そうだ、仲松さん。ちょっと声かけてやってくれるか?」
みのりはそう言われたものの、今は自分も出る幕はないと思った。