Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「久我先生から誘ってくれるのを待ってるうちに、澄ちゃん、おばあちゃんになっちゃうよ。クリスマスパーティは女同士でするとして、それとは別にイブにでも久我先生を誘いなよ。」
「ええ――っ…!!」
澄子が真っ赤な顔を左右に振っていると、職員トイレに年配の家庭科教師が入ってきたので、二人は口をつぐみ会釈をしてそこを出た。
職員室で澄子と別れ席に戻ると、1年生の日本史200人分の答案が、みのりの机の上に山と積まれていた。
ふぅーっとため息をつき、それを眺めると、とりあえず答案をきれいに揃える。そして、左の親指に指サック、右の腕に腕抜きをはめて赤ペンを握ると、早速採点に取り掛かった。
週が明けて火曜日、考査最終日のこの日は、私立文系の日本史の考査があった。
週末は遼太郎の家で合宿までして準備をしたラグビー部3人組は、まるでラグビーの試合に臨むかのような心境で考査を受けていた。
みのりが質問を受けに教室へ赴いた時も、他の生徒がどうでもいいようなやる気のない視線を向ける中、遼太郎はともかくとして、衛藤と二俣は周りにただならぬ空気を漂わせていた。
それに気づいたみのりが、少し驚いたような顔をすると、遼太郎は笑みを含んだ視線でみのりに目配せした。