Rhapsody in Love 〜約束の場所〜


 一通り教室の中を見て回ったみのりがいなくなって、遼太郎は二度ほど自分の答案を見直した。そして、二俣と衛藤へと目を移す。


『100点取るつもりで勉強しなきゃ、80点以上なんて取れないぜ。どの部分も完璧にしとかないと。』


 二人、特に衛藤に対して、遼太郎はそう言ってハッパをかけた。この町で一番大きな本屋まで出かけて行って、分野別になっている日本史の問題集を、今更ながらに買った。それを、幾度となく解いて、今度の考査に備えた。

 やるべきことはやった…という感はある。


――受験に生徒を送り出す教師の心境って、こんな感じなのかな…?


 ぼんやりとそんなことを思っていると、考査の終わりを告げるチャイムが鳴った。



 簡単な清掃後、終礼があり放課後になると、堰を切ったように職員室の中へと生徒たちが流れ込んできた。
 生徒たちは放課になったが、職員たちの勤務は通常通りだ。


 午後からの仕事に備えてお弁当を食べようとしていたみのりは、3人の厳つい男子生徒に取り囲まれた。振り返りながら、みのりは自分の席に座ったまま、目を丸くして3人を見上げた。


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