Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
最初に出てくるのは、衛藤の答案だ。早速採点に取り掛かろうとすると、無口な衛藤が声を上げた。
「…あの、先生。お、俺のは後からにしてくれませんか?」
ちらりと衛藤を見上げると、いかにも自信なさげな表情だ。手を止めて、みのりは息を吐いて確認した。
「じゃあ、誰から採点しようか?狩野くん?二俣くん?」
「俺、俺のからにしてくれよ!」
力強い二俣の主張に、みのりは気圧され気味に頷いて答案に向かった。
シュッ、シュッと素早くみのりは答案に丸を付けていく。
模範解答をほとんど見ないでどんどん丸を付けていくので、本当にちゃんと採点ができているのかと、遼太郎は目を見張った。
すると、ピクッとみのりのペンが止まる。
「うん…。ここ、間違えてる。」
と、二俣の解答に斜線を引いた。二俣はゴクリと息を呑んだ。
丸の数がずいぶん多いものの、ところどころに斜線が引かれている二俣の答案は、集計してみないと何とも言えなかった。
大問ごとに右端に記された点数を、計算機を使って合計する。
結果は86点。
「よっしゃ――――っ!!」
ガッツポーズをして天井を仰ぐ二俣の声が、職員室に響いた。