Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「すみません。勝手に。いやでも、何とか頑張ってみます。」

「ああ、そうか。あの本なら、いけるかもね。」


 みのりが安心したように微笑んだ時、


「先生―」


と、少し離れた書架のところから別の女子生徒に呼ばれた。


 その生徒の側で、遼太郎に対するのと同じように、みのりはいくつかの本を取り出してアドバイスをしている。


 午後の光が入り、空中の埃さえもキラキラと輝く空気に、みのりが包まれている。

 書架に挟まれて人目を気にしなくてよかった遼太郎は、久しぶりに心安く、我を忘れてしばらくその光景を見つめていた。




 ラグビー部の荘野の問題は、思っていたよりも早く表面化した。

 学校を辞めると言い出したのだ。
 もちろん、彼の両親も教師も、彼には辞めてほしくはない。けれども、引き留めようとして度重なった古庄との面談で、嫌気がさしたのか、退学する意志は決定的となりつつあった。


 その意志のを表す現象なのか、授業で荘野の姿を見ることが少なくなった。
 体育の授業や部活には出ているらしいので、学校生活が嫌になったわけではないらしい。
 おそらく、理解できない授業に出て、ずっと座っているしかないのは、苦痛なのだろう。



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