Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
視線は宙をさ迷い、思わず息が荒くなってしまう。
「先生?」
みのりの様子が変なのを訝しんで、遼太郎が首を傾げて、みのりを覗き込んだ。
その仕草に、夢の中でキスされたことを思い出して、みのりの頭の中はパニックになる。
「い、いや…。何でもない。次は3の1の日本史よね?急がなきゃ。狩野くんも二俣くんも遅れないようにね!」
みのりは辛うじてそう言いながら、遼太郎の側から逃げ出した。
これ以上一緒にいたら、感情を隠しておけなくなる。せっかくギクシャクした態度が改善されたのに、元に戻りたくない。
息があがってきて、みのりは走る足を止めた。授業道具を抱き締めて、息をつく。
さっきのように、教師と生徒として話せることが、一番心安いことなのだと、みのりは思った。自分の気持ちを知られたら、その微妙なバランスが壊れてしまう。
遼太郎を一人の生徒として見守ることが、自分にとって一番の幸せなのだ――。
そんなふうに、渡り廊下の窓から冬の晴れた空を見上げて、みのりはそう自分に言い聞かせた。