狂妄のアイリス

少女

「被害届を出せなかったから、罪には問われていないけど」


 樹から聞かされたおじさんとお母さんの関係。

 日向さんと私の出生の秘密。


「日向さんは……知ってるの?」


 自分が、レイプで生まれた子どもだってこと。


「知ってるもなにも、全部日向が調べたことだよ」


 樹のニヤニヤ笑いが止まらない。

 どうしてこんな重い話を笑いながら出来るんだろう。

 私は樹の笑顔を見てられなくて、俯く。


「でも、年齢が合わなくない?」


 おじさん――お父さん――裕二さん――どの名前であの人を呼べばいいんだろう。

 あの男が大学を卒業する時に、お母さんは身重の体で逃げ出したっていう。

 それから十二年、あの日まで私たちは会ったことがない。

 でも、私は十四歳の女子中学生。


「計算が合わないよ」
< 146 / 187 >

この作品をシェア

pagetop