狂妄のアイリス
「これでよかったか?」

「うん、ありがとう」


 車の助手席で待っていると、おじさんは白い菊の花束を買ってきた。

 私はそれを手袋をはめた手で受け取る。

 花束って言うのはちょっと違うのかな。

 お墓に供える用の花束って、なんて言うんだろう。


「じゃあ、行くか」


 おじさんがシートベルトを締めて、車を発進させる。

 今日は約束の週末。

 私の家族のお墓参りに向かっていた。

 膝の上で花束を抱えながら、私は目を閉じる。

 最後にお墓参りに行ったのはいつだったろう。

 あの事件で家族がそこに入ってからは、行っていなかった。

 おじさんと一緒に暮らし始めて、やっと行くことが出来る。

 一周忌に間に合ってよかった。

 花屋から霊園まではほど近い。

 私が少し目をつぶっている間に、着いてしまう。

 少し、胸がドキドキした。
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