略奪ウエディング


梨乃は俺を見上げて大きな瞳を煌めかせた。
そう、その目…。近くでもっとよく…見たい。

「病院の話は…分かったけれど…、君の言うことに納得できないことがある」

俺がそう言うと彼女は不安気な表情をする。
俺は微かに笑いながらその続きを言う。彼女の目を真っ直ぐに見据えて。

「茜とは終わっていると以前君に言ったはずだけど?彼女とは確かに先ほど会ったけれど、君たちが想像しているような関係ではない。今日、俺が彼女に会った理由はいずれ君たちにも分かる。…信じてほしい」

「…え?」

「は?」

二人は同じ反応をして俺を見て驚いた顔をした。

「牧野。梨乃が不安なときにそばにいてくれてありがとう。俺の行動が彼女をそんな気持ちにした。君に誓うよ。もう、君の手は必要ないと。…ありがとう。感謝してる」

牧野は黙って俺を睨んだ。
俺はそんな彼を真っ直ぐに見たままでいた。

「……ちぇ。…どうやら本当みたいだな。全く。格好つけすぎだよ」

「牧野」

彼はくるりと後ろを向いた。

「邪魔者は消えるとしますか。イケメン課長様には敵ナシってか」

「牧野くん」

梨乃が呼ぶと彼は振り返らないままで軽く手を振った。

「もう、俺はお前を助けない。よく話し合って」

それだけ言うと彼は歩き出した。

梨乃と俺はしばらく黙ったままで彼の後ろ姿を見ていた。


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