略奪ウエディング
世界一幸せな君へ
「課長、東雲のモデルルームですが、案内のバイトが一人週末休みたいと連絡があって…」
「え?それは困るな。四人は常駐していないと。派遣に連絡して人員を確保してくれ」
「課長~、安田オーナーが来週会いたいそうです~。何か建設を見合わせたいとか。元の予定地に戻したいそうです~」
「え?元の場所じゃ入居者は集まらないよ。分かった、今すぐ連絡する」
夕方のオフィスは騒がしい。
次々に上がってくる案件を、ハイスピードで処理する。
そんな俺の隣でアカマメはお茶を啜りながら新聞を読んでいる。
全く。今日くらい手伝ってくれよ。ゆっくりしてはいられないのだから。
俺は彼を横目で見ながら思う。俺がいなくなったらどうするんだよ。
「課長ー!」
「はいはい、ちょっと待って」
俺はアカマメに期待するのをやめて、呼ばれた方へと移動した。
オフィス全体が殺気立っている。
今日は特に皆が早く業務を終わらせようと必死だ。
俺は財布から札を一枚取り出すと、矢崎を呼び出した。
「これで缶コーヒー、人数分買ってきてくれないか」
「え?はい!ごちでーす!」
彼女は浮かれ足で自販機へと向かう。
「矢崎~俺のもだぞ」
アカマメが彼女に向かって叫ぶ。
俺はため息をついて呆れながら彼を見た後、電話をかけるために受話器を手に取った。